ばら (弐) 塩原 経央
一瞬の後に金属に化せるにあらず、
そがてふ。透きとほる色彩(いろどり)の翅さへも、
もと玻璃にてはあらざりしを。そがてふ、
夢に夢む、標本をよそほひて。
くちびるすぼめ試みに触れてみむ、
花弁に結ぶばらの露。
あえかにそよぎ、
光ににほひ立つ朝のばら。
水流る、
青きはるかなる空をそよがせ、
過ぎゆく鳥、ちぎれ雲、風。
さてはまた、そが白きばらも。
立ち上がらむとして、ためらふ。
そがてふ。ひろぐればこなごなに砕かるる、
そが翅。ぐにやり曲れるチタン合金の触角、
夢にある夢のいとど脆くあれば。
(四・三・三一=一六・六・二四 改作)