六月二十四日

碓江 悠々と流るること昨日に變らず、
妙義の峨峰 青天を負うて屹立するも亦不動なり。

老輩 無聊を喞つて 橋の欄干に肘つき、
白鷺 方寸の石上に物思ふを見る。

時間は樹間に架りたる蜘蛛の巣に囚れたるや、
古城址の急崖に風の音すら絶えて久し。

昨月 息男に嫁迎へ 今月 娘子を嫁に出して、
老輩の双肩 俄かに涼しくなれり。

然はあれ 何やらん心棒を拔かれたるの思ひ止まず、
自づと白鷺に合體して暮れ方を迎へ 橋上の愁人となる。


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