行人の春
               塩原経央
               
花圃(かほ)に菜花 金色(こんじき)に匂ひ立ち、

春気(しゆんき)發するの魁(さきがけ)となれり。


萬朶(ばんだ)の櫻花 舞ひ落ちて盡くる處知らざれど、

滿地落英(まんちらくえい)に些(いささ)かの哀情あり。


行人 何を以てか先を急ぐ、

造化 愈(いよいよ)繁なるを愉(ゆ)とするものを。


春雲重く 風寒き日はあれど、

桃梨(たうり)は樹上に紅白の蓋(きぬがさ)を
翳(かざ)す。

           (平成S年4月S日)




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