淺き夢
                 塩原 経央   

秋霖 雲居据わつて時を消すに閑、
書に倦みて肘を枕に夢は野に遊ぶ。

月明 美人を映し出せりと目を擦れば、
葵花 立ち枯れて佇むを知る。

六十の歳月 長きや短きや、
鬢上に霜を置いて唯に安佚を貪るのみ。

肌の冷ゆるに嚏して目を覚まし、
棒の如くなりたる腕を撫摩すること頻りなり。

       (平成十七年十月九日)




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