輓老師玉隣上人

飛鴻久不帶書來
筆硯何知埋積埃
遺墨如今藏在筐
毎開一幅一悲哀


老師玉隣上人ヲ輓ス

飛鴻 久シク書ヲ帶ビテ來タラズ
筆硯 何ゾ知ラン積埃ニ埋ルヲ
遺墨 如今 藏シテ筐ニ在リ
一幅ヲ開ク毎ニ 一悲哀



文を帶び飛來るべき雁なくば いかで久しく師を思はんや
知らざりき 積もれるちりに埋る あるじ在りせぬ筆すずりとや
今ははた 殘りし影や墨の跡 吾が寳にて竹筐にあり
ひろぐれば一幅ごとに蘇へるせつなき思ひ よるべなからん


(文化十一年)

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