山陽先生宅觀櫻

雨歇春園滴未乾
翠爐烟冷夜香殘
暫雲礙月花梢暗
倩燭簷頭自在看


山陽先生宅ニテ櫻ヲ觀ル

雨歇ミタル春園 滴リテ未ダ乾カズ
翠爐ノ烟 冷ヤヤカナレド 夜 香殘レリ
暫ク雲ノ月ヲ礙ギレバ 花ノ梢モ暗シ
燭ヲ倩リ 簷頭ヲ自在ニ看


春の雨 いつのまにやら 止みぬれどなほ滴れる 夜の庭先
煙たえ 翡翠の香炉 冷めぬれど  なほ漂へる 夜の殘り香
おぼろ月 さえぎる雲の たち出でば 花の梢は たちまち暗し
あかり借り 軒端に翳す 竿の先 心おき無く花を眺めん


文化十一年三月五日)

      ←次へ _____細香詩集目次へ