二 山陽先生宅觀櫻 雨歇春園滴未乾 翠爐烟冷夜香殘 暫雲礙月花梢暗 倩燭簷頭自在看 山陽先生宅ニテ櫻ヲ觀ル 雨歇ミタル春園 滴リテ未ダ乾カズ 翠爐ノ烟 冷ヤヤカナレド 夜 香殘レリ 暫ク雲ノ月ヲ礙ギレバ 花ノ梢モ暗シ 燭ヲ倩リ 簷頭ヲ自在ニ看ル 春の雨 いつのまにやら 止みぬれどなほ滴れる 夜の庭先 煙たえ 翡翠の香炉 冷めぬれど なほ漂へる 夜の殘り香 おぼろ月 さえぎる雲の たち出でば 花の梢は たちまち暗し あかり借り 軒端に翳す 竿の先 心おき無く花を眺めん (文化十一年三月五日)
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