一
甲戌仲春陪山陽登菴兩先生觀花於嵐山
微風晴定淑光和
小隊輕裝取次過
不恨看花三日早
満枝開遍醉人多
甲戌仲春
山陽登菴兩先生ニ陪シテ 花ヲ嵐山ニ觀ル
微風ニ晴ハ定マリ 淑光 和ス
小隊 輕裝シテ 取次ギテ過グ
恨マズ 花ヲ看ルニ 三日早キヲ
満枝 開遍ナレバ 醉人モ多カラン
さくら山 吹くなよ風に 晴れわたる 光しとやか 青やはらかし
人はみな 春のいでたち かろやかに 追ひ過ぎゆけり われら残して
満開に 三日とどかぬ 今日の花 されど厭はじ さこそ良きかな
満つるなら 酔ひ人多し さくら山 時のあひまに 伴にあらむと
(文化十一年二月)