百夜通ひに 深草の 人仆れしと 聞きしかど 驕りの春の 盛りにて 露こころにも 留めざりき はかなきものは 花の色 ながめせし間に うつろひぬ 身をうき草の 根を絶ちて 流るるままに さすらひぬ 關寺近き 夕まぐれ 卒塔婆に掛けて 月を待つ 破れ衣に つくも髮 影恥かしき 吾が姿 人聲絶えて 悽愴の 逢魔が時と なりにけり 迷ひ出でたる 少將の 遊魂吾を 責め止まず
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