なりひら 加藤 淳平
はろばろと 来つる旅かな 遥けくも 道は離(さか)りぬ 杜若(かきつばた) にほふ八つ橋 蔦しげる 宇津の山道 眼交いに 今もかかれど かそけくも なりにけるかな 打ち日さす 都大路も 人さはに 行き交ひし日も 花薫る 望月の夜に 相見しは 夢かうつつか 一年(ひととせ)の 後の夜風に 花散るは うつつか夢か 芥川 ほたる飛ぶ夜に 露ともに 消なましものを 何しかも 命ながらへ 東路に 恥のみ多き (〇二・一二・一九)
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