『續・禹域遊吟』 其の六
溧陽 其三 りつやう そのさん
〃天目湖〃畔に立ちて、暫し感慨に耽り、かの「遊子吟」を口誦めり。
寸草眞情久仰欽 寸草の眞情久くし仰欽す
時移人換莫由尋
時移り人換りて尋ぬるに由莫し
新開湖畔倚欄立 新たに開ける湖畔に欄に倚りて立ち
低唱當年遊子吟
低唱す 當年の遊子吟
[侵]
○ 平成二十三年四月二十九日作
*寸草 小さな草。孟郊の「遊子吟」(文末に紹介す)の語。
*仰欽 仰ぎしたふ。
*時移人換 世の移り變りを謂ふ。唐の王勃の詩に「星移物換幾度秋」(星移り物換りて幾度の秋ぞ)の句あり。
*遊子吟 「遊子身上衣 慈母手中線 臨行密密縫 意恐遲遲歸 誰言寸草心
報得三春蜻」(遊子身上の衣 慈母手中の線 行に臨んで密密に縫ふ
意は恐る遲遲たる歸りを 誰か言ふ寸草の心 三春の蜻に報い得んとは)