『續・禹域遊吟』 其の二
湖熟清眞寺 こじゆくせいしんじ
江蘇省の省都南京に三泊し、近郊を芬覽す。まづ湖熟鎭に漢代の湖熟國の跡を尋ぬるも、
探し當らず。案内人に導かれ、清眞寺を訪ふ。明・清時代よりのものと言ふ。蘭僧獨り寺を守る。寺内の公孫樹上に乱錨一雙鳴き交し、綿蠻好哢極り無し。
尋來淮水上源村 尋ね來る淮水上源の村
寂寞清眞古寺存
寂寞たる清眞古寺存す
白帽蘭僧獨迎客 白帽の蘭僧獨り客を迎へ
乱錨鳴處説天恩
乱錨鳴く處 天恩を説く
[元]
○ 平成二十三年四月二十七日作
*清眞寺 イスラム教の僧。
*淮水 秦淮河。北へ南京に流れ入る。
*上源 上流。
*蘭僧 イスラム教の僧。
*乱錨 高麗うぐひす。鳩ほどの大きさにて黄褐色の羽毛。高らかに鳴く。