『歐州紀行』 其の十四
鹽城聽妙樂 ザルツブルクにて めうがくをきく
墺大利旅行は、西のインスブルックより入り、獨逸領を僅かに
横切りて鹽城へ。ここは何と言うても莫差特なり。早速、古城にての
音樂會に參加す。
欲聽仙樂古城中 仙樂を聽かむと欲す 古城の中
索路登來城上宮 索路
登り來る 城上の宮
眼下千金良夜景 眼下 千金 良夜の景
妙音飛散入秋風
妙音 飛び散じて秋風に入る
[東]
○ 平成九年九月四日作
*仙樂 仙界の美しき音樂。白樂天の「長恨歌」に「仙樂風に飄(ひるがへ)りて
處處に聞こゆ」とあり。
*索路 ロープウェイ。
*飛散 李白の「春夜洛城聞笛」に「誰が家の玉笛か暗に聲を飛ばす、散じて春風
に入りて洛城に滿つ」とあり。