『歐州紀行』 其の十三
北國風光 ほくこく ふうくわう
ベネルクス三國周遊の締めくくり。
北國風光好 北國 風光好し
陰晴旦夕分 陰晴
旦夕に分かる
虹橋城裡雨 虹橋 城裡の雨
日脚畫中雲
日脚 畫中の雲
秋晩林蹊暗
秋晩れて 林蹊暗く
水寒塔影紛
水寒く 塔影紛たり
旬餘遍看後
旬餘 遍く看し後
離宴醉醺醺
離宴 醉うて醺醺たり
[文]
○ 平成八年九月十四日作
*ベネルクス 白耳義(ベルギー)、和蘭(オランダ)、盧森堡(ルクセンブルグ)三國の總稱。
*北國 ここは和蘭を言ふ。
*陰晴 くもりと晴れ。王維の「終南山」に「陰晴 衆壑殊なる」とある。
*旦夕 朝と晩。
*日脚 ひかげ、ひあし。岑參の「送李司諫歸京」に「雲開いて日脚黄なり」とある。
*林蹊 森の小道。
*旬餘 十日餘り。
*離宴 別れの宴。
*醺醺 酒に醉つて機嫌のよいさま