『歐州紀行』 其の十二
布魯塞爾近郊 ブリュッセルきんかう
ブリュッセル郊外に一泊、早朝散歩す。朝靄の中、早くも釣絲
を垂るる老人の姿あり。
傍水越丘投郭南 水に傍ひ丘を越え 郭南に投ずれば
客亭醴酒口中甘 客亭の醴酒
口中に甘し
五更眠覺歩林徑 五更 眠りより覺めて 林徑を歩めば
已見村翁釣曉潭
已に見る村翁の曉潭に釣るを
[覃]
○ 平成八年九月十一日作
*布魯塞爾 ブリュッセル。白耳義(ベルギー)王國の首都。
*郭南 南の村。
*醴酒 あま酒。
*五更 夜明け。更は夕暮れより夜明けまでを五區分する單位。
*曉潭 曉の淵。