『歐州紀行』 其の十一
窩大路偶成 ウオータールーぐうせい
窩大路の古戰場。記念館の中には當時の戰爭の模樣をパノラマにし
て展觀しあり。
獅子丘頭相鬪爭 獅子丘頭 相鬪爭し
霸王此地勢終傾 霸王此の地
勢ひ終に傾く
當時人馬悲鳴處 當時 人馬 悲鳴する處
風自平疇如有聲
風の平疇よりして 聲有るが如し
[庚]
○ 平成八年九月九日作
*偶成 たまたま成るの意。やや感慨をこめたる表現。
*窩大路 ウォータールー。白耳義(ベルギー)中部、ブリュッセル南部の町。
*獅子丘 窩大路にある古戰場。
*霸王 ナポレオンを謂(い)ふ。
*平疇 平なる畑。陶淵明の「癸卯歳始春懷古田舍」其二に「平疇に遠風交はる」とあり。