『歐州紀行』 其の五
南佛紀行 なんふつ きかう
南佛マルセイユよりプロバンス、最後は巴里へ。尼斯の海と空の青さに驚
き、プロバンスにてはセザンヌの畫室に醉ふ。第五句は、マルセイユ港に
第一歩を印せし森鷗外を、第六句は、イフ島にアレクサンドル・デュマを
偲べり。
光涵碧海與蒼空 光は涵す 碧海と蒼空と
遊客驚看造化工 遊客驚き看る
造化の工
臨水朱樓送帆影 水に臨む朱樓に帆影を送り
穿林畫室醉花風
林を穿つ畫室に花風に醉ふ
已尋舊港先人跡 已に尋ぬ 舊港先人の跡
亦見孤城文筆功 亦た見る 孤城文筆の功
歴覽南疆絶佳處
歴覽す 南疆絶佳の處
驅車更入古都中
車を驅つて更に入る古都の中
[東]
○ 平成六年九月十日作
*造化 自然、宇宙、造物主。
*花風 花を吹く風。ここにては
華やかなる風趣をいふ。
*歴覽 一つ一つ見物して廻る。
*南疆 南の國境附近。
*古都 巴里。