『歐州紀行』 其の三
臥窩士故地 ワーズワースこち
エヂンバラより南下して湖水地方に入り、ワーズワースの故郷を訪ぬ。
ワーズワースの詩に「日沈むとき、空は色づく」なる句あるを思ひ出
せり。
旋囘白鳥下淪漪 旋囘する白鳥 淪漪に下り
忽看丹霞染緑湄 忽ち看る丹霞の緑湄を染むるを
記得詩人有佳句 記し得たり 詩人に佳句有るを
水天成色夕陽時
水天色を成す 夕陽の時
[支]
○ 平成五年九月五日作
*臥窩士 ワーズワース(一七七○〜一八五○)。英國の挂冠詩人。自然觀照を歌へり。
*淪漪 さざなみ。
*丹霞 夕燒け雲。
*緑湄 緑のみぎは、岸。
*記得 記憶す。
*水天 白樂天の「宿湖中」に「水天晩に向ひ碧沈沈たり」とあり。