『禹域遊吟』 その百二完
柳 州(二) りうしう
柳宗元は、己が姓と同じ地に流されしことこそ皮肉なれ。彼はこの地にて奴隸
解放等數々の善政を施し、慕はる。千二百年を經し今もなほ。第三句にて「異服」
と言ひしは、少數民族多く、その服装を為せる故なり。
柳侯種柳柳江邊 柳侯 柳を種う柳江の邊
樹朽人亡惠化傳
樹朽ち 人亡くなるも 惠化傳ふ
異服郷翁説平昔
異服の郷翁 平昔を説く
魚峰山下雨餘天
魚峰山下 雨餘の天
[先]
○ 昭和六十一年九月
*柳侯 柳宗元を言ふ。この句は、柳宗元の柳州刺史なりし時に詠みし「種柳戲題」詩に
「柳州の柳刺史、柳を種う柳江の邊」とあるをもぢれり。
*柳江 柳州市の三方をぐるりと廻りて流る。
*惠化 恩惠を施して人々を教化す。
*平昔 むかし。
*魚峰山 柳州市の傍らに立つ