『禹域遊吟』 その九十九
漓江舟遊(一) りかう しういう
水量多からざるにより、途中より上船す。結果は首尾上々なりき。奇岩怪石を心ゆくまで眺め、飽くることなく、時間も程良し。唐詩にこの景を詠ずること少なきは、此の地まで來ることの難かりし故なるらむ。
山帯青煙遠近欹 山は青煙を帯びて遠近に欹(そばだ)ち
幽禽高下舞清漪
幽禽高下して清漪(せいい)に舞ふ
方舟一棹發江岸
方舟一棹 江岸を發し
忽入茫茫太古時
忽ち入る茫茫 太古の時
[支]
○ 昭和六十一年九月
*幽禽(ゆうきん) 奥深き所にすむ鳥。
*清漪 清らかなるさざ波。
*方舟 もやひ舟。