『禹域遊吟』 その九十三
東 湖 とうこ
紹 興
しやうこう
東湖は人造湖とは言へ、古く漢代より石を切り出せし所へ、水の自然に溜りて
成りしもの。紹興の人は、杭州の西湖を女性とせば、こちらは男性なりと誇る。
切立つ石壁の上より陽光注ぎ、水あくまで深く青し。
地占紹興東一方 地は占む 紹興 東の一方
衆工開鑿作仙郷 衆工開鑿して仙郷と作(な)る
洞天百尺如藍水 洞天百尺 藍の如き水
何讓西施濃淡粧
何ぞ讓らん 西施濃淡の粧
[陽]
○ 昭和五十七年九月
*西施濃淡の粧   杭州の西湖の美しさを言ふ。北宋の蘇東坡の「飲湖上初晴後雨」詩に
「西湖」を把(と)って西子に比せんと欲すれば、淡粧濃抹總て相宜し」とあり。