『禹域遊吟』 その九十
西湖孤山放鶴亭 せいこ こざん はうかくてい
林和靖遺址
りんなせい ゐし
杭州飯店の前に西泠(せいれい)橋あり。この橋を渡れば孤山。その西側の小道
を辿り行けば宋の高士林和靖の放鶴亭あり。近時、實物大の鶴の像二體を亭前
に置く。
曉來曳杖過西泠 曉來 杖を曳いて西泠を過ぐ
半發荷花渡水馨 半ば發(ひら)く荷花 水を渡つて馨し
放鶴主人何處去 鶴を放ちし主人何れの處にか去る
一叢老樹護孤亭
一叢の老樹 孤亭を護る
[青]
○ 昭和五十七年九月
*林和靖  北宋の林逋(九六七〜一○二八)。字は君復。諡して和靖先生といふ。一生
仕官せず、放浪の後、西湖の孤山に庵を結び、妻をめとらず、梅の花と鶴とを伴ふ。人呼んでこれを「梅妻鶴子」(梅の妻、鶴の子)といふ。
*西泠  橋の名。杭州の西湖畔、孤山と蘇堤の間にあり。西湖十景の一。
*荷花  蓮の花。