『禹域遊吟』 その八十八
江南周遊偶成 かうなん しういう ぐうせい
この年の江南行は天候に惠まれず、南京にては雨、無錫にては風に惱む。それ
故杭州西湖の春景色に逢ひし折は大いに安堵せり。杭州飯店に泊りし翌朝、湖
岸を散策して作詞す。
金陵夜雨惠山風 金陵の夜雨 惠山の風
豈料江南寒未融 豈料(はか)らんや江南 寒未だ融けざらんとは
幸有西施湖上柳 幸に西施湖上の柳有りて
多情招我曉煙中
多情 我を招く 曉煙の中
[東]
○ 昭和六十二年三月
*金陵 今の南京。
*惠山  山名。江蘇省無錫市の西。
*西施湖  西湖のこと。
*曉煙    朝もや。