『禹域遊吟』 その八十七
再訪江南 さいはう かうなん
この年は、三月と四月に二度江南を旅す。第一句は、三月の旅行の終りの景。
第二句は、四月の再訪の景。第四句は『三體詩』の杜常の「行き盡す江南
の數十程」を借用す。
去日江頭柳半萌
去る日 江頭 柳半ば萌え
來時湖上百花榮 來る時 湖上 百花榮ゆ
今年最喜三春裏 今年最も喜ぶ 三春の裏
兩看江南數十程 兩(ふたつ)ながら看る 江南の數十程
[庚]
○ 昭和五十九年四月
*三體詩 南宋・周弼の編(一二五〇年成立?)。唐代の詩の七言絶句、七言律詩、五言
律詩の三體を集めしものにて一六七人の作、四九四首を收む。
*杜常 北宋の衛州の人。官は工部尚書に至る。但し、唐末の別人なりとの説あり。
*三春 春の三ケ月。孟春、仲春、季春。