『禹域遊吟』 その八十五
霊巌寺 れいがんじ
館娃宮址
くわんあきゅうし
蘇州の西郊、太湖に近き所に、靈巖寺はあり。ほどよき高さの山路を登れば、山頂
に寺あり。ここは二千五百年の昔、呉王夫差(ふさ)の西施がために建てし館娃宮の
跡。當時の遺物は已に無けれど、眺めは變ることなし。
江南五日始天晴 江南五日 始めて天晴る
花徑登來到梵城 花徑登り來りて梵城(ぼんじやう)に到る
一望水雲呉地闊 一望の水雲 呉地闊(ひろ)く
香風吹動古今情
香風吹き動かす 古今の情
[庚]
○ 昭和六十二年三月
*梵城  寺。靈巖寺を指す。