『禹域遊吟』 その八
十四
訪寒山寺 かんざんじを とふ
三度、寒山寺を訪れし折の作。南京より蘇州へ来し故、第一句はそを言ふ。
性空上人は有名な書家と見え、東京の百貨店にて書の展覧、即売の広告を見しことあり。
看花渡水自金陵
花を看 水を渡り 金陵よりす
三訪呉中情不勝 三たび呉中を訪うて情に勝へず
城外寒山古名刹 城外 寒山の古名刹
春風吹處問高僧
春風吹く處 高僧を問ふ
[蒸]
○ 昭和六十二年三月
*看花渡水 明・高啓の「尋胡隱居」詩の「水を渡り復た水を渡り、花を看還た花を看る」を意識す。
*金陵
今の南京。
*呉中 蘇州の古名。
*名刹 立派な寺。寒山寺を指す。