『禹域遊吟』 その八
十二
蘇州運河舟行 そしう うんが しうかう
蘇州、寒山寺の前より運河の船に乗る。穩やかなる水路、間近に手に取る如き春田の景。昔隋の煬帝(やうだい)樂しめりといふ運河の船遊びを今滿喫する心地なり。
龍船一棹發楓橋
龍船一棹 楓橋を發す
岸柳堤花映水搖 岸柳 堤花 水に映じて搖らぐ
百里運河航路穩 百里の運河 航路穩やかに
此行有比帝王驕
此の行 帝王に比して驕(おご)る有り
[蕭]
○ 昭和六十二年三月
*龍船 もと天子の乘る船。遊覽船を洒落て言ふ。
*楓橋
寒山寺の前にある橋。もと封橋と稱せしが、唐・張繼の「楓橋夜泊」詩の有名になりてより楓橋といふ。
*帝王 随の煬帝。