『禹域遊吟』 その六十二
自重慶向武漢飛機上 ぢゆうけいよりぶかんにむかふひきじやう
漢詩愛好家の團を組みて行ひし最初の旅。廣州―成都―重慶と經廻りて
武漢
へ飛ぶ。暖き重慶より霜白き武漢空港に降立つ。
直自渝山向鄂川
直ちに渝山より鄂川に向ふ
不乘黄鶴作飛仙 黄鶴(くわうかく)に乘ぜずして飛仙となる
一炊夢覺白雲裏 一炊(すい)の夢覺む 白雲の裏
身在洞庭湖上天
身は在り 洞庭湖上の天
[先]
○ 昭和五十四年一月
*渝山(ゆさん) 渝は四川省重慶の別稱。重慶の山。
*鄂川(がくせん) 鄂は湖北省の別稱。ここは武漢をいふ。
*黄鶴(くわうかく) 武漢に黄鶴樓あり。黄の鶴に乘りし仙人を記念せし樓なり。その
傳説を
踏まへて言ふ。
*一炊夢 ここは極めて短き時間の謂なり。