『禹域遊吟』 その五十二
君山雜詠 (二) くんざんざつえい
洞庭湖に浮ぶ君山は、渇水期には地續きとなる。島人の墓は水の干滿により水上
に出で或いは沈む。小さき島なれど、島内にて銀針茶なる珍しき茶を栽培す。
十畝花園十頃田
十畝の花園 十頃の田
青螺孤島是吾天 青螺の孤島 是れ吾が天
老餘埋骨荻蘆畔 老餘 骨を埋む 荻蘆(てきろ)の畔
湖水平時水下眠
湖水平かなる時 水下に眠る
[元]
○ 昭和五十八年三月
* 青螺 青き山の形容。唐・劉禹錫の「望洞庭」詩に「遥に望む洞庭山色の翠なるを、白銀盤裏の一青螺」
なる句あり。
* 老餘 老いたる後。死後。
* 荻蘆の畔 荻(おぎ)や蘆(あし)の繁るほとり。