『禹域遊吟』 その三十九
喀什三仙洞 カシュガルさんせんどう
三仙洞も、カシュガルの名所の一つなり。但し、谷を隔てし向ふの絶壁の洞窟へは、行く術なし。ただ遠方より眺むるのみ。一筋の大道 西北へ向ふ。早やすぐ先は露西亞領なり。小さき龍卷の走るを見る。
白日火雲千里間
白日火雲 千里の間
遙看洞窟隔人寰 遙に看る洞窟の人寰を隔つるを
沙場處處旋風起 沙場 處處 旋風起り
直向前方俄國山
直ちに向ふ 前方 俄國(ロシア)の山
[刪]
○ 昭和六十三年九月
*人寰(じんくわん) 人の世。世間。
*沙場 沙漠をいふ。
*旋風 つむじ風。