『禹域遊吟』 その三十七
高昌故城 かうしやうこじやう
高昌國の古跡は、吐魯番(トルファン)の郊外にあり。土壁の一部殘るのみ。容赦なき炎熱に喘ぎつつ樓臺跡を廻るに、物蔭よりウイグルの子らバラバラと駈け來る。眞に元氣なり。
千年風日廢高臺 千年の風日 廢高臺
西域繁華歸土埃 西域の繁華 土埃(どあい)に歸す
銜感低徊炎熱下 感を銜(ふく)んで低徊す 炎熱の下
胡童三兩出牆來
胡童三兩 牆(しやう)を出で來たる
[灰]
○ 昭和五十九年九月
*高昌 國名。漢の車師都尉國。今の新疆ウイグル自治區吐魯番市の東。
*胡童 ここはウイグル族の子供の意味に用ふ。