『禹域遊吟』
その二十五
秦兵馬俑坑 しんへいばようかう
秦の兵馬俑の發掘は、近年最も大いなる發見の一つなり。始皇帝の墓を守るために作られし等身大の將士・軍馬の埴輪(はにわ)、その數八千といふ。屋根にて完全に蔽ひし展示館に立ちて、その偉容を見る。なほ、この詩は『日本歴代名歌七絶百首』(北京・書目文獻出版社)に採らる。
秦山之北之東 秦山(しんざん)の北(は)の東
贏政陵前黄土中 贏政陵(えいせいりょう)前 黄土の中
不見太平開朗世 見ずや 太平開朗(かいらう)の世
八千兵馬爲誰雄 八千の兵馬 誰が爲にか雄なる
[東]
○ 昭和五十五年三月
*秦兵馬俑坑 陝西省臨潼縣の東五粁、秦始皇陵の東側に在り。
近年一號坑の他に二、三號坑も見學可能となる。
*
川の名。秦嶺に源を發し、西安の近くを北へ流れて渭水に注ぐ。
*贏政 始皇帝。贏は秦の姓、政は始皇帝の名。