『禹域遊吟』
その二十二
自北京到西安飛機上 北京より西安に到る飛機上
國内線にて北京より西安へ飛べば、眼下の景頗る良好なり。太行(たいかう)山脈を横切りて山西の平原へ出で、汾水(ふんすい)・黄河を跨ぎ、一路西の西安へ。大學訪中團にて初めて西安を訪れし折の作。憧れの長安への期待で胸躍らせつつ窓外の景色に見入りたり。
太行山上密雲殫 太行山上 密雲殫(つ)き
三晉平原眼下看
三晉(さんしん)の平原 眼下に看る
汾水呂梁何細小 汾水 呂梁(りょりゃう) 何ぞ細小なる
西陽沒處望西安 西陽沒する處 西安を望む
[寒]
○ 昭和五十二年十二月
*殫 つく。すべてなくなる。
*三晉 春秋時代、晉の家老が晉を三分し獨立して生れし國。韓・魏・趙。今の山西の地。
*呂梁 山名。山西省離石縣の東北。禹(う)が洪水を治めし時、呂梁を鑿(うが)てり。