『禹域遊吟』 その十一
渾源縣 こんげんけん
渾源縣は大同の北、恒山の山麓の町なり。「連環の計」にて董卓を謀殺せる、三國志
の美女貂蝉の出でし地として知らる。名物は麺なり。小刀にて削ぎ湯に投ずる故、刀麺といふ。
貂蝉故里傍渾河 貂蝉(てうぜん)の故里
渾河に傍ふ
閭巷猶存古俗多 閭巷 猶ほ 古俗を存すること多し
刀麺豆芽鷄黍飯 刀麺(たうめん) 豆芽鷄黍(けいしょ) の飯
村娃笑問味如何 村娃笑ひて問ふ 味如何と
[歌]
○ 昭和五十八年八月
* 貂蝉 後漢・呂布の妻の名。現代にては中國四大美女の一人に數へらる。
* 刀麺 庖丁にて麺を削ぎ鍋に入るる。山西省の名物料理。
* 豆芽(とうが) もやし。