『禹域遊吟』 その七
舞臺遭雨 舞臺(ぶうだい)にて雨に遭ふ
『論語』先進篇に見ゆる舞臺を尋ぬれば、雨降り来る。
畑中の小高き丘それなり。草をかきわけ上に登れば、
石碑一つ。一行二十六名に、偶々曲阜にて出会ひし
金谷治博士を加へ、雨中を風詠して帰りぬ。
往昔高蹤没草莱 往昔の高蹤(かうしよう)草莱に没す
披榛尋路共登臺 榛を披き路を尋ねて共に臺に登る
快然浴得清秋雨 快然浴し得たり 清秋の雨
二十七人風詠回 二十七人風詠して回る
[灰]
* 舞臺 舞は雨乞ひの祭り。曲阜の郊外に雨乞ひの土壇あり。
* 披榛 やぶをかきわけて
* 快然 心地よき様子
* 風詠 『論語』先進篇にありて、孔子が夫々弟子に抱負を聞
きし折の曾皙の答「暮春には春服既に成り、冠者五六
人・童子六七人を得て沂に浴し、舞寛に風して、詠じ
て帰らん」を踏まふ。