文語日誌(平成二十三年九月某日)
土屋 博
泥鰌宰相
平成二十三年
九月某日
野田佳彦議員(昭和三十二年(一九五七)生まれ、千葉縣船橋市出身)、八月二十九日の民主黨代表選擧の演説に於いて相田みつを(大正十三年(一九二四)生まれ、栃木縣足利市出身、平成三年(一九九一)歿)の詩「どぢやう」、『どぢやうがさ 金魚のまねすることねんだよなあ』を引用せり。
ドヂヤウはドヂヤウとして本物、金魚のまねをすると僞者になる趣旨、還暦過ぎてやうやく詩人として名前知られたる相田みつを、同世代の賣れつ子作家を金魚に譬へたる由に候。
日本人の自分自身を謙下するの美徳、久し振りに接したる心地こそ致し候へ。
政治家の演説にユーモアのセンスを尊ぶ英國にても、LOACH(どぢやう)を引用したる野田演説の評價低からず。
なほ、聞けば、相田も野田も偶然同じ誕生日五月二十日なりと。
〔參考〕「どぜう」なる表記は「駒形どぜう」の初代店主越後屋助七が文化三年(一八〇六年)の江戸大火により店の類燒に遭ひ、「どぢやう」の四文字偶數にては縁起惡しと有名なる看板書きの仙吉に頼み込み、奇數三文字の「どぜう」と書かせたるを起源とす。
▼「日々廊」表紙へ戻る
▼「文語の苑」表紙へ戻る