文語日誌
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文語日誌(平成二十二年十二月)
     
                  松岡 隆範

國際コイン・デザイン・コムペティションの審査
平成二十二年十二月十二日(月)




 大阪の造幣局本局に於て、國際コイン・デザイン・コムペティションの最終審査行はれたり。(コインとは此の場合、コイン・サイズ・メダルの意なり)
 第一次審査は既に十月始めに行ひたり。第一次審査に於ては表裏一組のデザイン原圖數百點のうちより五點を選ぶ。
 次に此の五點、五人の作家は原圖よりレリイフを製作し、その完成石膏原型五點(十面)を提出す。そのうちより最優秀賞一點、優秀賞一點を選び他の三點を佳作となすなり。
 本コムペティションは平成十年(一九九八)に始り、本年第十三囘なり。
 毎囘ヨオロッパ諸國を主として東洋からは韓國、フィリピン、マレイシア、近年は中華人民共和國、印度も加はり參加國の數は非常に多し。
 かかる國際コムペティションを定期的に行ひをるは世界で日本造幣局のみなり。世界の貨幣メダルに關心あるデザイナア、彫刻家にとりて唯一の國際的活動の場なれば知名度も高まり年々參加國、參加作家の數は増え行くなり。
 始めよりフランス、イタリア、及びポオランド、ハンガリイ等の東歐が實力ありしが近年はウクライナが特に秀れ、今囘も最終五點に殘りたるはウクライナ二點、イタリア二點、日本一點なりき。
 今迄ヨオロツパの水準の高さとあまりに格差あるため、日本からの應募は第一次審査を通過し得ず、爲に日本人の應募は減る一方なりき。(日本造幣局關係者は應募することを得ず)
 日本人の應募の數は減りたれども水準は徐々に高まりやうやく近年に致りて最終五點中に殘りたること二囘あり。
 然るに今囘日本人の作品が初めて最優秀賞に選ばれたり。主題は「はやぶさ歸還」なり。主題が最新の世界的ニユウズにしてデザイン、彫刻が端的にしてわかりやすくメダルとして效果的なりし故なり。
 優秀賞はウクライナ、佳作三點はイタリア、イタリア、ウクライナなり。
 審査は正味二時間に及び十分に討議を盡してやうやく決着せるものなり。
 審査員は造幣局長、彫刻家二名、デザイナア一名、工藝家一名の五名なり。
 余は第一囘より審査に當りたるが、かほどに公正嚴格、討議を盡す審査は世に類少かるべし。毎度中々に疲るる仕事なり。
 夕方造幣局の現役の後輩たちと共に退廳し梅田にて大いに飮み、食らひ、語らひ樂しかりき。
 余が肴に「燒鯖」と注文せしに「燒ソバ」が來たり、皆注文したるおぼえなくとも「うまし」と食らひ、後に余が店員に「燒鯖」は如何なりしと問ひたるに「鯖」ならば「鯖の一夜干しの燒いたもの」と注文すべしとのことなりき。
 以上平成二十二年十二月十二日の記録なり。


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