文語日誌
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文語日誌(平成二十年十一月)
     
                  市 川 浩

空幕長更迭
平成二十年十一月十一日(火)晴




 田母神前空幕長懸賞論文最優秀賞に當選するも、論旨政府見解に異なれりとて更迭、本日參議院外交防衞委員會に參考人として招致せらる。


 今日の複雜を極はむる社會にありては、それぞれ專門の智識によりて事を決するを常とするも、教育、福祉、外交、安全保障等國民共通の問題には衆智を集めて針路を誤たざるの要あり。然るに人多くは成人して社會に出づるに官廳・企業等謂はゆる組織に所屬すれば、定年を迎ふるまで發言を抑制せざるを得ず。特に人生經驗を積み社會的にも樞要の地位を占むるに至らばその抑制を強ひらるゝこと更なり。かくして言論人は組織に屬せざるを條件とせる傾向生ず。無所屬の賢人數多あるは論を俟たずといへども、同時に組織人にも賢者あり、その説を如何に吸上ぐるや工夫あるべき所なり。その意味にては論文募集は有效の手段の一つなるに今囘のことにて、應募の萎縮を懸念す。


 此の儘推移せむか、我が國言論の基盤羸痩るいそうし、或いは眞實を隱蔽し、或いは正論を封殺し、或いは詭激の論ばつし、延いて國策を誤るの懼れなしとせず。幸ひに長壽世代矍鑠としてなほ活躍の人士多く、良識の發言大いに言論界に刺戟を與へをり。特に大人數なる定年直後の團塊世代、再學習によりて必ずや有爲の發想を産み、思想の高度成長を擔ふべし。我は其の案内の一役果さまほしと思ふのみ。


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