文語日誌
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文語日誌(平成二十年九月)
     
                  市 川 浩

終戰の日
平成二十年八月十五日(金)晴




 六十三囘目の終戰記念日、何よりも先づ靖國神社參拜に趨く。本年は福田總理早々と不參拜を表明、渡りに舟と、マスコミ各社靖國問題沈默するのみ。小泉、安倍元前總理の他、野田聖子大臣他閣僚二人のみ參拜、昨年も高市大臣一人參拜、男性閣僚の參拜無かりき。されど炎天下木陰一つなき正面參道に今年も老若男女數多整列し順次靜々と拜殿に向かふ。「靖國にて逢はむ」「あとに續くを信ず」とて、戰陣に散りたまひし英靈に祈り捧ぐる人々の姿に改めて感動を覺ゆ。今惟ふに當時は「勝敗は兵家の常」と敗戰を甘受す。然るに苛烈の占領政策は肉食獸と草食獸との戰なりしを知らしむ。辛うじてその虎口を逃れむと苦鬪半世紀、なほ豫斷を許さざるものあり。國民多くにこれを自覺せしむるの言論あらまほしと思ふにつけて、全國戰歿者追悼式にての首相、兩院議長、只管「侵略戰爭」の謝罪に終始、慰靈の念表明せる報道もなきを奈何せん。
 折から開催の北京オリンピック、チベット、ウイグル問題ある中、表面盛況裡に進行す。その中に我が大和撫子の活躍大和益荒男を壓倒するの勢ひめでたく、女性閣僚の靖國神社參拜思ひ合せらる。因に最近町中にて見掛くる女人粧ひあでやかに生き生きと歩みゆくに、連れの男の子兔角不精者に見劣りす。女子は男子と肩を竝べむの意欲あるに、男子は女子を凌がむの霸氣乏しかるらむ。男女同權とて、男子も料理、裁縫の家事學ぶべきに、これに秀づる男子生徒のことあまり聞かざるは、畢竟取組みの姿勢に熱意少きか。女性萬歳、憾むらくは工學部門女性進出少くして衰頽の兆ありと。我が製造業の、中小企業と工學の兩面より崩れなば、國の大事にも至るべし。


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