文語日誌
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文語日誌(平成二十二年二月)
     
                  小椋智美

チョコレート菓子作り




 二月十六日、友人と二人バレンタインデーにちなみ、參加せるコミュニティのためチョコレート菓子を手作りす。
 夜中十一時三十分を過ぎての開始により、眼しよぼつき瞼ふたがりかゝるもバターと卵黄をひたすらに混ぜ合はす。日附變はりしころ、小麥粉にココアパウダーを加へしものをボウルに投入し、再び混ぜ合はす。我も友人も共にこのころ氣力失せ無言になりぬ。しかれども、匙を置きて手を用ゐ、こね始むるにただよふ甘き香りに力取り戻し、生地完成せり。伸ばせる生地冷藏庫にて寢かす間に、バター、卵、粉飛び散り慘然たるありさまなる調理臺の片附けをしき。調理器具洗ひ終はりしころ、生地を冷藏庫より取出だし、ハートの型に拔く。バターを塗りたる鐵板に竝べ、二十二分ほどオーブンにて燒く。甘き香りさらに強く、期待に胸ふくるる心地す。完成の電子音鳴り終はらぬ間にふた開け、ミトン附けし手により鐵板をとり出だす。色形よく、上出來と言へり。ホワイトチョコレートを細く掛け、また浸しなどし、加へてドライストロベリーをまぶす。味見したる一枚、苦勞もあり美味しく、友人と二人喜び合ふ。燒き菓子の冷え固まり完成せるとき、既に時計三時を指せり。全ての片附けの濟みたるは三時半なり。部屋に戻るにすぐに蒲團に倒れ、それ以後目の覺むるまで一切の記憶なかりけり。
 昨十七日の會議に、この燒き菓子喜ばれたる、ひさびさの菓子作りまた樂しからずや。ホワイトデーに再び何か作らんと思ふ。しかれども、我次なる機會は晝に行はんと決意す。
(お茶の水女子大學 文教育學部 言語文化學科 二年)


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