文語日誌
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文語日誌
     
                  小椋智美

風かをる五月




 大型連休中盤たる五月一日、我、寮の友人二人と新宿御苑を訪ふ。天候快晴、薫風清々、散歩日和といふに相應し。
新宿驛より地圖などは持たず、人づてに聞くままに進む。直ちに迷ひぬ。されど新宿御苑、國民公園なれば案内標識多く我ら大いに助けらる。最寄のコンビニにおいて園内にて食すべく辨當を購入、貳百圓の入園料を支拂ひて入園す。新宿御苑、高遠藩元江戸屋敷の一部たる地に明治三十九年に誕生す。内藤新宿試驗場、新宿植物御苑の時代經て皇室庭園として造らるるも戰後國民公園として解放せらる。高層ビル立ち竝ぶ新宿にありて別世界と言ふべし。
 空廣くはるかに都廳の頂見ゆ。踏み心地よき芝生の廣場、踏み固められたる土の歩道、木に植ゑ込みに花壇にと咲くとりどりの花、木漏れ日の清々し廣葉樹の林道、木葉花瓣など落ち風情ある囘遊式の池、また園内彼方此方に八重の櫻盛りにして幾重にも花瓣を重くまとひて新緑の間に垂る。遊歩道にては呼吸のたびフィトンチッドを體内に取込む思ひす。
 英吉利風景庭園、佛蘭西式整形庭園、日本庭園の順に巡る。温室は改修工事中立入禁止につき斷念す。幼子の裸足にて芝生驅け遊ぶ英吉利風景庭園、プラタナス竝木の壯觀たる佛蘭西式整形庭園、八重櫻、躑躅の丸く刈られ、繋がりたる池に鯉泳ぐ日本庭園、いづれも飽かず樂しむ。
 談笑し、風景、花、人物區別なく寫眞を撮りつつ進むが故に進行遲々として進まず。一周終へたるは十五時を過ぐ。閉園時間十六時なれば我ら安堵の息をつく。疲れ感ずるも心地よし。
 新宿御苑の見所たるや春の櫻秋の菊と聞く。我、今より秋の訪ひを樂しみとす。
(お茶の水女子大學 言語文化學科二年)


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