文語日誌
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文語日誌(平成二十二年一月)
     
                  兒玉 稔

 日本航空の倒産處理



 議論ありし株式會社日本航空が處理、「私的整理」によらずして會社更生法申請の「法的整理」即ち倒産との報道あり。



 妥當なり。そもそもある企業、債務超過に陷りて存續し得ざる時は銀行など債權者に辨濟猶豫又は債權切捨を求め、容れられざれば敢て延命を圖らず倒産せしむるが至當。當該企業、社會にとりて必要ならば倒産の後に再生、不要ならば清算すべし。



 これまで日航經營陣及び銀行など債權者らは、法的整理とせば信用失墜し客離る、外國空港使用に障碍生ず、燃料購入困難化、なんどと言ひ立て私的整理に持込まむとしたり。説得力乏しき言ひ分なり。數個の米國有力航空會社、法的整理に至るも後に再生し飛行機今不自由なく飛ぶ。近くは米國ゼネラルモーター社、不安論ある中、法的整理手續きに入り今然程の混亂なきまま再生途上にあり。假に日航らが指摘の不便現出し混亂生ずとも世間が辛抱出來ぬほどにあらず。



 法的整理は裁判所管理下手續なれば關係者の情状入り難く透明にて徹底し易し。これに異を唱へ來たる輩が眞意は、裁判所の介入を避け、自分らの談合によりて問題を先に送り、己が組織や己個人への責任追及と損失負擔を抑へむとの狙ひなり。詭辯を弄し自己の立場利益を護らんとするこそ淺ましけれ。



 日航苦境の一因に中央地方の政治家官廳による不經濟地方路線押附け壓力ありとの説聞こゆ。。然あるとても日航經營幹部が責任減ずることなし。壓力に屈するか否かは日航が判斷なればなり。職を賭しても正しきをなす氣概社内に漲りたらば横車通ることなし。むしろ、外部壓力を口實に自らの策を通ししこと無かりしか疑ふ。



 たとひ我が見立てと異なり誠心誠意粉骨碎身の努力實らず今に至るとすも、時に利あらざれば事はならじ。潔く職を退き、後事を局外有識者の判斷に委ねむとの態度こそ見まほしけれ。



 日航社員の電網掲示板「日航年金を考える會」にも己が利害に囚はれたる書込み多し。見苦しと言ふべし。これまで竝を超ゆる俸給年金得たる人達なり。同情すれども、美しからずとの感禁じ難し。



 かく言ふ我は、長年勤務せる金融機關破綻して職失ひしことある者なり。
 


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