岡崎久彦 - 蹇蹇録 - 其の五 |
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『蹇蹇録』 其の五 岡崎 久彦 日本の大兵がソウルに到着せる頃には、東學党の乱は已に終熄しつつあり。しかも、日本の素早い動きに「しまつた」と思ひし清國は相互撤兵を提案し、列國もこれを支持する。ここに日本が發せる七千餘の兵は立ち枯れの虞れあり、進退兩難に陷る。 「外交にありては被動者たるの地位を取り軍事にありては常に機先を制せんとしたるが故に、かかる間髮を容れざる時機においても外交と軍事との關係上、歩武相聯行するためその各當事者はすこぶる慘憺の苦心を費やしたるは今においてこれを追憶するも、なほ竦然たるものあり。」 これこそ、日清戰爭において、陸奧が、さらに日本が、最も困窮せる時期なり。 「この内外の情形に對してその措置を尽さんとせば、到底何とか一首の外交政略を施し、時局を一轉するの道を講ずるの外、策なき場合となりぬ。」 蹇蹇録第三章はここに終はる。さて陸奧の祕策とは何ぞや。 ▼「蹇蹇録」其の六へ ▼「侃々院」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る |