岡崎久彦 - 蹇蹇録 - 其の四 |
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『蹇蹇録』 其の四 岡崎 久彦 清國より接到せる公文書は、出兵の通知のみ。されどその中に「屬邦(朝鮮)を保護せんがため」とあるに對し、陸奧は、單に通知受領の返事のみにとどまらず、朝鮮を清國の屬邦とは認めず、と咎めり。 「・・・保護屬邦の文字に對しては、我は既に默視する能はず。而して我よりの照會に對して彼また數多(あまた)の詰問を試みんとせり。平和いまだ破れず干戈いまだ交らざるも、僅か一篇の簡牘(かんとく)中既に彼我その見る所を同じくせずして、早くも甲爭乙抗の状態を表したる此(かく)の如し。別種の電氣を含める雨雲は已に正に相觸る。その一轉して電撃雷轟となるは形勢において甚だ明らかなり。」 たしかに、朝鮮が清國の屬邦か獨立國かが明治初年以來日清間の唯一最大の爭點なりき。金玉均の『獨立党』が日本に頼りしも、清國の羈絆を脱せんがためなり。 ▼「蹇蹇録」其の五へ ▼「侃々院」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る |