岡崎久彦 - 蹇蹇録 - 其の十一 |
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『蹇蹇録』 其の十一 岡崎 久彦 米國もまた干渉し來たる。 「もし日本にして無名の師を興し、微弱にして防禦に堪へざる隣國 を兵火の修羅場たらしむるに至らば、合衆國大統領は痛惜すべし」と言ふ。陸奧はよく米國を知る者なり。米國は格別なる政策的 意圖を持ち合せず、「畢竟人間普通の恆心なる平和の希望(人類共 通の願望たる平和の希求)と朝鮮の懇請を拒み難かりしの外、何ら の意思を有せざるものたるは明白なり」と喝破し、鄭重なる囘答に より事情を説明せるのみに止めり。その判斷また極めて犀利、的確 といふべし。 中外六大州の治亂 上下三千年の興亡 茫々、宇内に義鬪なし 強食弱肉 屠場に似たり 讀み來りて 瑞氣眼底を藹(みた)すは 一篇 米國獨立の章 讀書と思索に明け暮れし獄中にて陸奧が作れる詩なり。既にして 陸奧は確乎たる知米派、親米派たり。 ▼「蹇蹇録」其の十二へ ▼「侃々院」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る |