侃々院>[大東亞戰爭詩史 列傳]清水 浩
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[大東亞戰爭詩史 列傳]  清水 浩


詩史列伝(その九)


■軍相列伝


東条英機陸軍大将


 泥沼に陥れる支那事変の解決に、陸軍の強硬派を代表せしは東条将軍なり。昭和十六年日米交渉は暗礁に乗り上げ、近衛首相は遂に内閣を投げ出すに至る。そのあと首相に推されしは、木戸内大臣の「毒を制するに毒をもつてす」なる苦肉の策による。組閣せし彼は、開戰囘避の叡旨を奉じ、平和的打開に最後の努力を払ふも、事態はすでに手遅れなりき。几帳面且つ真面目の能吏なるも、大戦争の指導をするの器量乏しければ、次第に憲兵をも用ひたる独裁者となり、遂には首相、陸相のほか、参謀総長まで兼務し、戰局を打開せむとして果さず、サイパン失陥を機に辞任を余儀なくせらる。されど、天皇は真面目なる彼を最も信頼せられたりと伝ふ。戦犯として逮捕の際自決に失敗せるも、法廷にての陳述は堂々たるものあり。


和戰關頭載冠冕  
和戰の關頭 冠冕(クワンベン・かんむり。顕官の服装)を戴き


折衝無效及兵端  
折衝 效無く兵端に及ぶ


盡忠能吏專權裏  
盡忠の能吏 專權の裏(うち)


絶海窮兵下激湍  
絶海の窮兵 激湍(ゲキタン・激しい急流)を下る


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