侃々院>[大東亞戰爭詩史 列傳]清水 浩
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[大東亞戰爭詩史 列傳]  清水 浩


詩史列伝(その十)


■軍相列伝


阿南維幾(これちか)陸軍大將


 最終局面に陸相として登場、陸軍の葬式を取り仕切りたるは、人格者なりとして全陸軍の信望を集めをりし阿南将軍なり。 武人として最後まで抗戦の意思を失なはず、御前会議に於ても粘りに粘りて鈴木首相、米内海相を手こずらせり。 されど一旦聖斷が下るや潔くこれに服し、その夜壮烈なる割腹を遂ぐ。強硬論は将軍の腹芸との説あるも、真偽は不明なり。 恐らく最も難しき立場の身とて、軍の動揺を避けむがためかと思はる。「一死以テ大罪ヲ謝シ奉ル」との遺書と辞世の歌を残す。


 大君の深き恵に浴みし身は言ひ遺すへき片言もなし


輿望翕然鍾一身  
輿望(ヨバウ)翕然(キフゼン、集まる)一身 に鍾(あつま)る


肯臨破局至誠人  
肯へて破局に臨む至誠の人


岐途説盡死中活  
岐途 説き盡くす死中の活


鮮血自詮承詔眞  
鮮血 自づから詮(あき)らかにす承詔の眞


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