侃々院>[大東亞戰爭詩史 列傳]清水 浩
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[大東亞戰爭詩史 列傳]  清水 浩


詩史列伝(その三)


■将帥列伝


今村均陸軍大将


 大戦を通じ最も尊敬せらるる人物は今村将軍なり。蘭領東印度(現インドネシア)攻略軍の軍司令官として、幸運にも恵まれ楽勝す。占領後の軍政方針は人道的にして他に例を見ず。その後ラバウルの方面軍司令官となるも、大軍を擁して堅陣を構築し、周辺を開墾して現地自活の態勢を取る。ために米軍はこれを避け、攻撃することなくして放置し、無用の存在たらしむ。将軍の真価は敗戦後にも発揮せられたり。ラバウルよりジャカルタの監獄に移されて入獄せし夜、現地人の政治犯は喜んで将軍を迎へ、将軍の作らしめし「八重潮」なる歌を斉唱す。東京に於て服役す可く送らるるも、部下と苦労を共にせんことを欲して、インドネシアの収容所に復帰す。刑期満了して帰宅せる後も、自宅の一隅に三畳一間の小屋を建てて蟄居し、戦死者の供養に終始せり。


土民壺漿 天兵
  土民(土着の民)壺漿(軍隊を歓迎する)し
  て天兵を (むか)ふ


自給大軍孤島耕  
  自給の大軍 孤島を耕やす


敗將蒙冤收獄夜  
  敗将 冤を蒙りて獄に收まるの夜


忽聞敬慕齊歌聲  
  忽ち聞く敬慕して齊歌するの聲


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