侃々院>[大東亞戰爭詩史 列傳]清水 浩 |
推奨環境:1024×768, IE5.5以上 |
[大東亞戰爭詩史 列傳] 清水 浩 詩史列伝(その二) 一、将帥列伝 山下奉文(ともゆき)陸軍大将 マレー作戦にて勇名を馳せし山下将軍は、体重百キロを超す巨漢なるも、魁偉なる風貌に似ず、細心緻密なる性格なりき。東条首相に敬遠され、関東軍司令官に追はるゝも、昭和十九年秋、比島方面軍司令官に起用せらる。着任せしは米軍のレイテ島上陸僅か一個月前の事なりき。折しも大本営は誤報を信じ、ルソン島決戦の既定方針を急遽レイテ決戦に変更せしため、多大の出血を強ひらる。 以後は何如に名将と雖も施す策無く、ルソン島に於ても撤退に次ぐ撤退を重ね、北部山中にて終戦を迎へ、報復裁判により処刑せらる。武藤章総参謀長は、山中の将軍を詠じて曰く。 老将の蠅叩きをり卓一つ 軍鋒叱咤擅長驅 軍鋒(軍勢のほこ先)叱咤して擅いままに長 驅し 巨漢一聲驚痩躯 巨漢の一聲 痩躯(英軍司令官パーシバル将 軍)を驚かす 比島運籌時已晩 比島の運籌(うんちゅう、作戦計画)時已に 晩し 悠然拂蠅奈甘駑 悠然と蠅を拂ひ駑(ど、にぶい馬)に甘んず るを奈(いか)んせん ▼ その三へ ▼「侃々院」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る |