侃々院>[大東亞戰爭詩史 列傳]清水 浩
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[大東亞戰爭詩史 列傳]  清水 浩


詩史列伝(その一)


 旧臘(昨年十二月)「大東亜戦争詩史−漢詩で綴る大戦史−」なる一書を刊行せり。前(さき))の大戦に関し、満洲事変に始まる前史、真珠湾攻撃以後の主要作戦、更に戦後の事等を長短種々の漢詩型にて詠ずると共に、夫々に説明文を付し、漢詩を知らず戦争を知らざる者と雖も、理解し得る如くせるものなり。古今を通じて類書のなきものと秘かに自負す。何故にかくの如き勝算無き大戦を始めたるか、また拙劣なる作戦を続けたるかとの疑問を戦後久しく抱き来りたれば、こはその解答なると共に、この大戦の多数犠牲者に対する鎮魂歌ともなれり。


 此の書を岡崎久彦先生に贈呈せるに、「文語の苑」への入会と寄稿を勧めらる。よりて其の示唆に從ひ詩史中の「列伝」を適宜寄稿することとせり。列伝は大戦中に活躍せる軍部、政府指導者の人物像を描きしものにして、将帥列伝、参謀列伝、軍相列伝、文相列伝に分つ。軍人幹部の多くは在職中これら職務を歴任せる者多き故に、区分は単に便宜的なるものに過ぎず。他に庶民を対象とせる草莽列伝を設く。


 そもそも文語文の濫觴(起源)は漢詩文の訓読にあり。古くより日本人は漢詩文の 訓読なる大発明をなし、在来のやまと言葉と融合させて文語文を生むに至れり。然れ ども明治以降の西洋文明吸収により漢詩文は衰微の一途を辿り、更に戦後の国語改革 に伴ひて文語文も亦忘れられんとす。大東亜戦争詩史が此の伝統保持の一助とならば 望外の喜びなり。


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