侃々院>[近衞上奏文]解説 市川 浩 |
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[近衞上奏文]解説 市川 浩 ■第七囘 ソ聯ハカクノ如ク歐洲諸國ニ對シ表面ハ、内政不干渉ノ立場ヲ取ルモ事實ニ於テハ極度ノ内政干渉ヲナシ、國内政治ヲ親ソ的方向ニ引スラント致シ居候。ソ聯ノ此意圖ハ東亞ニ對シテモ同樣ニシテ、現ニ延安ニハモスコーヨリ來レル岡野ヲ中心ニ日本解放聯盟組織セラレ朝鮮獨立同盟、朝鮮義勇軍、臺灣先鋒隊等ト連絡、日本ニ呼ヒカケ居リ候。 「呼ビカケ居リ候」は「居候」にて可なり。 *岡野とは「岡野進」の筆名を有する野坂參貳(終戰後歸國して「參三」と改名)前日本共産黨最高幹部會議議長。百一歳の天壽を全うするも死の直前黨より除名處分を受く。 カクノ如キ形勢ヨリ推シテ考フルニ、ソ連ハヤカテ日本ノ内政ニ干渉シ來ル危險十分アリト存セラレ候(即チ共産黨公認、ドゴール政府、パドリオ政府ニ要求セシ如ク共産主義者ノ入閣、治安維持法及防共協定ノ廢止等々)飜テ國内ヲ見ルニ、共産革命達成ノアラユル條件日々具備セラレユク觀有之候。即生活ノ窮乏、勞働者ノ發言權ノ搗蛛A英米ニ對スル敵慨心昂揚ノ反面タル親ソ氣分、軍部内一味ノ革新運動、之ニ便乘スル新謂新官僚ノ運動、及之ヲ背後ヨリ操リツツアル左翼分子ノ暗躍等ニ御座候。右ノ内特ニ憂慮スヘキハ軍部内一味ノ革新運動ニ有之候。 「存セラレ候」、「存ず」自身謙讓語なるゆゑ「存候」にて十分なり。「敵慨心」は宛字、「敵愾心」が正しく、「新謂新官僚」は「所謂」の誤植。 *「親ソ氣分」既に前年九月、ソ聯への廣田弘毅特使の派遣打診をはじめ、ソ聯を和平の仲介役とせんとする空氣強し。但し此の後、四月五日日ソ中立條約延長破棄通告あり。 ▼[近衞上奏文]解説 第八囘へ ▼「侃々院」表紙へ戻る ▼「文語の苑」表紙へ戻る |